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ヘリコバクター・ピロリ菌とは何ですか?
ヘリコバクター・ピロリ菌は、日本人の胃ガンになる原因の一つではないかと言われています。もしかしたら、テレビや新聞などで、”ピロリ菌”という名前を聞いたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか?
ピロリは胃の中にいる菌で、主に胃や十二指腸で起こる病気の原因になります。
以前は、胃は胃酸でいっぱいなので、このような胃酸の中で耐えて、生き残れる菌はいないと考えられていました。
ところが、オーストラリアの学者が胃の中に菌がいることを提唱し、実証しました。
それが、ヘリコバクター・ピロリ菌で、この菌がいろいろな悪さをしていることが明らかになってきました。
Q どんな症状になりますか?
一度、ピロリ菌に感染すると、除菌しない限り、多くの場合ピロリ菌は胃の中に住み続けます。ピロリ菌に感染すると胃に炎症が起きますが、この時点では、ほとんどの人は自覚症状がありません。そのまま除菌しないでいると、慢性胃炎になります。
この慢性胃炎が、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、胃ガンなどの病気を発症する原因になることが、明らかになってきました。
Q どんな治療方法がありますか?
今年の4月に検診を受けた人たちから「ヘリコバクター・ピロリ菌が胃にいると言われたのですが、どうしたらいいのですか?」という質問をされました。
この菌に関しての研究はかなり進んでいて、ピロリ菌は除菌したほうが良いという事がわかっています。
一般的な除菌の方法は、二種類の抗生物質とプロトンポンプ・インヒビターという強力な制酸薬を、一週間内服し胃酸を抑えることで、菌を退治するやり方です。
今まで、胃潰瘍や十二指腸潰瘍の人だけが、保険の適用を受けてこの薬を内服できました。
しかし、今年の4月からは、慢性胃炎という診断結果を受けた人も保険の適用対象になりました。
その適用対象になった理由は、北海道大学の研究チームの成果によるものだと思います。胃がんの手術後に、ヘリコバクター・ピロリ菌の除菌をした場合と除菌をしなかった場合を比べてみたら、除菌をした人の再がん率が除菌をしなかった人の、3分の1になったという研究結果が発表されたからです。
この研究結果を厚生労働省も重視して、胃がんの予防に、ヘリコバクター・ピロリ菌を除菌することは有効だと判断したのだと考えます。
こうして慢性胃炎の人でも、一週間の除菌療法が保険の適用を受けて、できるようになりました。もっとも、慢性胃炎という診断を受けるためには、内視鏡による検査が必要です。
Q 小児科でピロリ菌がいるかは、わかりませんか?
子どもの場合、内視鏡検査をしないとわかりにくいので、ピロリ菌がいるかどうかを小児科で調べるのは難しいです。
大人になると、血液・便、尿などで、抗体がわかります。こういった人は、子どもの時から長い間感染していて、抗体がだんだん出てくるのでわかるのですが、子どもの場合には、感染していても抗体が産生しにくいのでわかりにくいのです。
そこで、子どもの場合、内視鏡検査か呼気試験で調べます。
Q 呼気試験とは、どのようなものですか?
正式名称は、”尿素呼気試験”といいます。
ピロリ菌は胃の中の尿素を分解して、アンモニアと二酸化炭素を生成します。ピロリ菌がいる場合、検査薬を飲むと二酸化炭素を多く排出するので、二酸化炭素の吐く量でピロリ菌がいるかどうかを調べる方法です。
検査薬を飲んだ後に、右や左を向いたりで、いろいろと体位を変えて15分くらい経ってから吐いた息を採取して調べるので、小さなお子さんには難しいですが、確実な検査方法です。
Q 日常生活で予防する方法はありますか?
残念ながら日常生活では、これといった特別な予防手段はありません。
ただ、家族の中にピロリ菌のいる人がわかったら、唾液で感染するので、大皿から自分の箸を使って食べることは、やめましょう。
また、赤ちゃんに食べ物を噛み砕いてから食べさせたり、口移しで食べさせたりするのは絶対にやめてください。
Q 流行の時期はありますか?
特に、はやる時期はなく、一年中かかります。ただ、赤ちゃんの時にかかる人が多いのです。なぜなら、赤ちゃんは、いろいろなものを舐めるからです。でも、舐めるのをやめさせるのは、なかなか難しいですね。
家族にピロリ菌のいる人がわかった場合、お子さんにもピロリ菌がいるかどうかを検査することが望ましいです。でも、先ほども言いましたが、除菌を保険の適用対象にするためには、慢性胃炎に発症していることが必要で、また、子どもの場合には、内視鏡検査でないとわかりにくいのが現状ですが、内視鏡検査をするのは、困難な場合が多いです。
そこで、今の段階では断定できませんが、兵庫県篠山市のように自治体の取り組みで中学生に尿素呼気試験検診などを実施して、早く除菌をすれば、発がん率は減少すると考えています。
発がんする可能性を、赤ちゃんの時からピロリ菌がいない人と赤ちゃんの時からピロリ菌がいて数十年経ってから除菌した人とを比べてみると、やはり前者の人は、ほとんどガンになることはありません。
しかし、後者の人も発ガンする可能性は前者の人よりも多いですが、発ガン率は3分の1に減少するのです。
そこで、春の検診でピロリ菌が見つかったという人は、できるだけ早く除菌をしたほうが良いと思います。
まとめ
ピロリ菌は、一週間薬を服用すれば、70%くらいの人が除菌できます。しかし30%ぐらいの人はうまく除菌ができないこともあります。その場合は、違う種類の抗生物質を使い除菌をすることができます。その場合も保険の適用対象になります。
以上のように、私は上記の事を踏まえても、あなたやあなたの家族のために除菌することをおすすめします。